アンジェイ・ズラウスキー『コスモス』

・もう2ヶ月くらい前になるんですが、アンジェイ・ズラウスキー『コスモス』(2015)を新文芸坐で観ました。

ズラウスキーはこの15年ぶりの新作を発表したのち75歳で亡くなってしまったんですが、訃報が流れてからも中々日本では劇場公開されず、東京国際映画祭で1度だけ上映されるに留まっていたので今回の上映は貴重でした。

 

ただ内容としては、正直「遺作」というエクスキューズが付いてなければこうやって上映される機会も無かったのでは?と思うくらい、振り切れたアバンギャルドでしたね。

後期のブニュエルやアランレネを彷彿とさせるようなナンセンス会話劇で、デジタル撮影の質感は同じポーランドのスコリモフスキ『イレブン・ミニッツ』辺りに近い印象を受けました。

大学生の主人公が泊まる下宿先で、ホストの家族が巻き起こすエキセントリックな行動の数々(感情が昂ると静止してしまう母、樹に吊るされた動物の死骸、事故で唇がめくれ上がったメイド、etc...)にひたすら翻弄されるわけです。

 ゴンブローヴィッチの原作は未読ですが、まともに再現した結果としてこの内容なんでしょうか。

やがて下宿先の人妻に魅了されていく主人公ですが、寝室で夫と抱き合う姿を覗き見て「奴は僕を裏切った!」と憤慨。彼女が飼っている黒猫の首をへし折って中庭の樹に吊るし、翌朝それを発見して泣きわめく彼女を眺めてほくそ笑みます。

(改めて書き出してみると本当にキチガイしかいないなこの映画...)

 

彼女と結ばれた未来 / 結ばれなかった未来 を反復させるラストも含め、どこまでも人を食ったような映画でしたが、観てから2ヶ月ほど経った今振り返ると悪くない映画だったように思えます。

 

描かれる男女の心の機微、駆け引きは行動のエキセントリックさと反比例するかのように繊細で魅力的でしたし、キッチンの床にこぼれたグリンピースを集めるシークエンスや海辺でパラソルを広げるショットの構図としての美しさは目を見張るものがありました。

 

そしてなにより、あまりにも全編が躍動的で若々しい!

まるでカメラを初めて手に取った大学生の様な若々しさが全編に漲っていて、創作などされている方は何かしら勇気付けられるものがあると思いました。

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