『アンダー・ザ・シルバーレイク』のメモ

思い浮かんだことをつらつら。

 

■サムが犬殺しであることを匂わせる描写の抜粋

「この映画にとって誰が犬殺しかなんて重要じゃねーから!」という意見もあるが、抜粋してみて分かったことは、やはりここは映画の主要な軸の1つでありながら多分見過ごされてる部分が多い要素だということ。

劇中でゾディアックコードが用いられていることもあり、映画『ゾディアック』のように真犯人を突き止める事の徒労感を演出している、という見方もできなくはないが、それだと話の辻褄が合わない。

 

では以下に時系列順で

①サムの部屋に入った彼女が「なに?この臭い・・・」と訊ねる。サムは「スカンクだよ。ゴルフ場の近くの森にいる。」と返すが、どこか歯切れが悪い。この時点ではまだサムはスカンクに小便をかけられていないはずであり、何かおかしい。

②サラの犬に会ったサムは、犬用のビスケットをポケットから取り出す。サラに「あなたも犬を飼っているの?」と訊かれたサムは「僕の犬は最近死んだんだ。」と答える。

③バーで友達から「例の犬殺しどもの話だけど...」と言われ「1人だけじゃないのか?」と聞き返すサム。その後は落ち着きなくストローの包み紙をちぎり始める。

④本屋の店員に金を渡して、犬殺しの真相を知っていると書かれた同人誌の作者に無理くり会おうとするサム。

⑤売れない俳優が自分より有名な犬に嫉妬し、犬を殺し始める...と言った同人誌の内容。

⑥夢(?)の中でサムは自分のポケットに入っているのと同じビスケットが道に落ちているのを見つける。ビスケットが落ちている方へ進むとそこには犬の死体があるが、サムは特に驚いた様子もなく歩き進める。

⑦夢から醒めたサムの手にはベタベタしたものがくっついている。前日に車にイタズラされた時のガムに見えるが、車に付いていたガムが白いのに比べてこちらは赤く、乾いた血のようにも見える。もしかすると昨晩の夢は現実だったのだろうか。

(前の晩に殴られたガキが流血してるのでそれかも。しかし、その後のシーンでサムは右手に缶ビールを握っているので、血が付いたのはこれより後の出来事...?とすればやっぱり夢は現実...?)

(目を覚ますときに股間に手を突っ込んでいるので夢精(!)した可能性もある)

(このシーン自体はサム役のアンドリュー・ガーフィールドアメイジングスパイダーマンを演じていたことのパロディである。手にくっ付いてる漫画もアメスパ。)

⑧女子トイレで鉢合わせた女の子たちがサムに向かって犬のように吠える。

⑨帰り道、犬殺しらしき者の影に怯えるサム。普通に考えればサムが犬殺しでないことを表すシーンだが、③での会話を踏まえると「自分以外にも犬殺しがいるかもしれない...!」というサムの強迫観念を表したシーンに見えなくもない。

⑩プールを泳ぐサラがサムに向かって犬のように吠える。

⑪通りを歩くサムに向かって吠える犬たち。

⑫ソングライターを殺した(?)次のシーンでベランダに佇むサムは無地のTシャツに着替えているが、よく見るとそこにも返り血が付いている。この返り血は一体誰のものなのか。

f:id:Guru_Asa:20190711194051j:plain

⑬パーティで返り血の付いたシャツを「ステキなシャツ」と褒められて怪訝な顔をするサム。

⑭大富豪セブンスの娘に「猫派?犬派?」と訊かれ「犬には幼少期のトラウマがあって...」と返すサム。②の「飼っていた犬が死んだ」というのが恐らく嘘であることが分かるエピソード。

⑮大富豪セブンスの娘が「犬を殺す奴はきっと人間も殺すわ。」と言うとサムは少し間を空けて「どうかな。」と答える。

 

■(ここからは完全に推測だが)この映画が失敗しているのは、上記のような理由をもってして観客に「サムが犬殺しだ」という疑念を抱かせ、ラストでそれをホームレスの王によって詰問されたサムが涙ながらに真実を釈明する、という恐らくデヴィッドロバートミッチェルが描いていたであろう筋書きが、匂わせ程度にしかなっていないので真意を掴みづらいからではないか。(自分はBDで何度か見直してこの結論に至った)

例えばホームレスの王は「なぜ犬用のビスケットを持ち歩いているんだ?」と繰り返し詰問するが、多くの観客はこの段階になって初めてサムが犬用のビスケットを常に持ち歩いているのだと気付くんじゃないだろうか。なにせそれにまつわる描写は上記②の1回きりしかない。もう1回ぐらいはビスケットを取り出す描写を入れた方がよかったのでは。

 

■ラスト直前、ベッドインした近所の老婆から「パチュリの香り?」と訊かれるサム。パチュリは香水に使われるので、容疑が晴れて臭いも変わった?