2000年代邦楽アルバムベスト60位~41位
60位 くるり「THE WORLD IS MINE」
アルバムごとに音楽性を変える京都出身のロックバンドの、エレクトロニカに接近した4th。ダウンテンポのハウス、アコギやピアノの弾き語り、トラッドなチェンバーポップなどジャンルを越境した楽曲達には気怠い美しさがあるが、どこか夏の終わりのような寂寥感に満ちている。
https://www.youtube.com/watch?v=9-VN4sA7szM
59位 COALTAR OF THE DEEPERS「Yukari Telepath」
90年代から活動するロックバンドの6th。シューゲイザーにスラッシュメタルの要素を掛け合わせていた従来のスタイルをさらに進化させ、三味線やガムランを用いながら1曲1曲の密度を高めている。
58位 ASIAN KUNG-FU GENERATION「君繋ファイブエム」
NUMBER GIRL以降のオルタナのフォーマットに、BECK由来のラップ的な押韻を落とし込んだ鬼っ子バンドのメジャー1st。これより後の作品と比べ抒情的に訴えかけるような楽曲が多く、同時代のポストハードコアやエモ系のバンドとの共振を感じさせる。
57位 GO!GO!7188「鬣」
鹿児島出身のスリーピースロックバンドの、シングル②"浮舟"を含むバンド史上最高のヒットになった3rd。沖縄民謡的なヨナ抜き音階を用いながら、椎名林檎以降の「和」の表現を更新している。
56位 ROVO「MON」
勝井祐二、山本精一、益子樹らが率いるスーパーバンドの6th。初期のニューエイジ的なトランスの高揚感をそのままに、フュージョンの領域に入りつつある超絶技巧のパーカッションがライブ感溢れるダイナミズムを伝えている。
55位 スピッツ「ハヤブサ」
石田ショーキチをプロデューサーに迎え、従来のイメージから脱したパンク的な衝動を前面に出した9th。ボトムの太いベースラインでファットな印象を楽曲に与えながら、⑥"HOLIDAY"のように軽やかにスイングできるバンドは貴重。
54位 Polaris「Union」
『宇宙 日本 世田谷』の先の彼岸と極甘J-POPの狭間をスリリングに行き来するバンドの1つの到達点。9分を超える⑥"Fast & Slow"のダブ音響に絡みつくストリングス、遠く響くエレピの繊細な息遣いを聴け!
53位 Plus-Tech Squeeze Box「Cartooom!」
とにかくアッパーで躁的、カートゥーンの世界に放り込まれたようなカットアップの嵐。28分の収録時間に4500種類以上のサンプリングを詰め込み、『FANTASMA』以降のコーネリアスが忘れたものを取り戻そうと試しみている。
52位 COWPERS「揺ラシツヅケル」
92年結成、札幌出身のロックバンドの2nd。つんのめるビートに不協和音やカオティックな絶叫を叩きつけながら、日本語の語感を損なわないポストハードコア / エモのスタイルを研ぎ澄ましている。
51位 SAKANA「Blind Moon」
1983年に結成されたポコペン(ボーカル)と西脇一弘(ギター)のユニットの11th。アメリカのフリーフォークブームと共振するかのように日本の「うたもの」シーンがにわかに注目された2000年代初頭、羅針盤らと共に音響からの回帰として「うた」へ向かうというアプローチは名コンピ『So Far Songs』とこのアルバムに結実したと言える。
50位 ART-SCHOOL「LOVE/HATE」
ギターボーカルの木下理樹を中心としたロックバンドの2nd。前作に比べ曲のグランジ濃度は倍増。重いパワーコードのリフをガシガシとキメながら、乾いた暴力性と少年のような繊細さを同居させている。
49位 ゆらゆら帝国「ゆらゆら帝国のめまい」
坂本慎太郎を中心に結成されたスリーピース・ロックバンドの、「~のしびれ」と共に同時発売された5th。冷たいテクノ的なビート感を持った曲が集められた「~のしびれ」に比べ、メロウな歌謡サイドの曲が集められており、時に狂おしいファズ・ギターを響かせながら現代のおとぎ話を紡いでいる。
48位 1000 Travels of Jawaharlal「Owari Wa Konai」
チェコのレーベルであるDAY AFTERと共同リリースされた、北九州出身のハードコア・パンクバンドの唯一のフルアルバム。ささくれ立ったDCパンク直系のギターサウンドが、聴き手の感情をかきむしるように鳴らされている。日本語で歌うこと、現実から目をそらさないこと、己の中の感情に愚直なまでに正直であること。
47位 くるり「TEAM ROCK」
京都出身のロックバンドのエレクトロ、ハウスに接近した3rd。俗に言う「97年の世代」のアーティストが同時代の音楽をジャンル関係なく雑多に吸収していた中、その誰よりもくるりはバンドのアティチュードとして折衷性を体現していた。⑨"ばらの花"はその最良の成果の一つ。
46位 ASIAN KUNG-FU GENERATION「ファンクラブ」
ポストパンク・リバイバルの波にリアルタイムで共振した3rd。時代性を反映させたような鬱屈とした曲調の中で、複雑な変拍子を多用しながら「君」と「僕」の半径5メートルの距離から世界の果てまでを夢想する。
45位 戸張大輔「ドラム」
90年代半ばにカセット音源がカルト的な人気を得たSSWの2nd。日本の奥深くにある秘境の地で奏でられているような、幽玄なドリームポップ。
44位 宇多田ヒカル「ULTRA BLUE」
世界デビューアルバムを経て、オルタナティブ路線に回帰した5th。『DEEP RIVER』で完成した内省的なシンガーソングライターとしての側面を残しながら、攻撃的な電子音が吹っ切れた印象を与える。スクリレックスもお気に入りの1枚。
43位 七尾旅人「ひきがたり・ものがたり Vol.1 蜂雀」
1998年に19歳でデビューした、異形の天才SSWの3rd。アコースティックギター主体の弾語りで構成されており、特異的な言語センスとミニマルな音響空間がリスナーをメルヘンの世界へと没入させる。
42位 NUMBER GIRL「NUM-HEAVYMETALLIC」
前作に続いてデイヴ・フリッドマンと手を組んだ4th。祭囃子的なビートやダブ、ラップなどのアプローチを新たに導入し、リフの強度を高めることによりプログレッシブな快楽を突き詰めている。
41位 ミドリ「セカンド」
「関西ゼロ世代」の最終兵器と謳われたバンドの2ndフル。ライブパフォーマンスやメディア露出の下品さが国内での評価を下げているきらいがあるけど、ポスト・ボアダムスなアヴァンギャルドのエッセンスをピアノ中心のギターロックの中で再構築している...という意味では、アティチュードとしてブルックリン系のバンド達と近かったのでは。