2000年代邦楽アルバムベスト80位~61位
80位 BUMP OF CHICKEN「jupiter」
2000年代の日本を代表する4人組ロックバンドの、世代を超えて人気を得るきっかけになったメジャーデビュー1作目。1曲1曲がこれより後のJ-POPの定石を形作ったような風格さえ漂っている全10曲。
BUMP OF CHICKEN『天体観測』 - YouTube
79位 aiko「桜の木の下」
大阪出身の女性シンガーソングライターによる ②"花火"⑩"カブトムシ"等ヒットシングルを多数収録した2nd。ブルース的なシャッフルビートや節回しを交えながら、独自のコード感で間口の広いポップスを紡いでいる。
aiko-『桜の時』music video short version - YouTube
78位 めめ「ちとてとち」
ゆゆ(good music!)とヨダサチエ(Win A Sheep Free)のデュオによる目下唯一の音源。ガットギター弾き語りにテルミンという特殊編成で、透明なアシッドフォークを鳴らす。レコーディング&マスタリング等でイトケンが参加。
77位 フジファブリック「フジファブリック」
インディーズ期のEP3枚からの抜粋に、四季をテーマにしたシングルを追加したメジャー1st。ギターとキーボードを主体とした楽曲はドアーズやムタンチスなどの影響を感じさせ、サイケかつプログレッシブ。プロデュースは片寄明人(GREAT3)。
フジファブリック (Fujifabric) - 桜の季節(Sakura No Kisetsu) - YouTube
76位 Serani Poji「One-Room Survival」
ドリームキャスト用ゲームソフト『ROOMMANIA#203』のゲーム音楽のための企画ユニットの2nd。ラウンジにボサノヴァ、ハウスをミックスした渋谷系ロリータポップス。プロデュースは福富幸宏。
75位 MASS OF THE FERMENTING DREGS「MASS OF THE FERMENTING DREGS」
神戸で結成された女性3ピースバンドの1st。疾走感のあるバンドサウンドに爽やかなコーラスワークが冴えわたる、ポスト・ハードコア世代にとっての少年ナイフ。2曲にプロデュースとしてデイヴ・フリッドマンが参加。
74位 川本真琴「gobbledygook」
ミリオンセラーを記録した1stから一転、プロデュースに安原兵衛を迎え宅録的な色味を増した2nd。DAWによるサンプリングとエディットを駆使しながら、前作以上のスケール感のアートポップを展開している。ゲストにGUITAR VADERが参加。
73位 ふちがみとふなと「ハッピーセット」
京都在住の渕上純子と船戸博史によるユニットの5th。ウッドベースとボーカルのみのシンプルな構成で、日常の生活に寄り添うような素朴な"うた"を聴かせる。
72位 ART-SCHOOL「Requiem for Innocence」
ギターボーカルの木下理樹を中心に結成されたロックバンドのメジャー1st。グランジ的なグシャッとしたギターリフのループが曲を構成しているが、メロディの感覚はポウジーズなどの陽性のパワーポップに近い。
71位 ZAZEN BOYS「ZAZEN BOYS II」
元NUMBER GIRLの向井秀徳を中心に結成されたロックバンドの2nd。「法被を着たレッドツェッペリン」のキャッチコピー通り、プレゼンス期のツェッペリンの様な強靭なバンドサウンドがプリンス譲りのR&B、日本語ラップ、NUMBER GIRL時代を思い出させるハードコアなどバラエティ豊かな楽曲を支えている。
70位 ウリチパン郡「ジャイアントクラブ」
OORUTAICHIとYTAMOによって結成されたユニットの2nd。ドラムに千住宗臣、キーボードに亀井奈穂子を加えたバンド編成で祝祭感あふれるアフロビートを鳴らしながらも、漂うのは土着的なフォルクローレの匂い。
69位 チャットモンチー「告白」
徳島県出身の女性3人組ロックバンドの3rd。タイアップにもなった既発シングル②"ヒラヒラヒラク秘密ノ扉"④"染まるよ"⑪"風吹けば恋"⑫"Last Love Letter"のポップな印象とは裏腹に、無骨なほどに荒さを宿したバンド・アンサンブルが光る。
68位 渋さ知らズ「渋星」
スタジオ録音としては8年ぶりの8作目。フジロックのために来日中であったSun Ra Arkestraのメンバー3人を迎え、"Space is the Place"と"Images"を収録。また代表曲でもある”本多工務店のテーマ”も初めてのスタジオ収録をしており、和洋の混然一体となったカオティックな狂騒が楽しめる。
67位 downy「第四作品集『無題』」
2000年に結成された5人編成ポストロックバンドの4th。大幅にジャズ的なアプローチを取り入れたことにより、ブルータルな音像はさらに深化。ゴリゴリとした低音がハードコア由来のストイシズムを感じさせながらも、初期作の中では最もポップで間口の広いアルバムに仕上がっている。
66位 UA「Sun」
90年代にナチュラル志向のR&Bで一世を風靡した女性アーティストの5th。菊地成孔を筆頭に元・ティポグラフィカの外山明など国内屈指のジャズプレーヤーをメンバーに招聘し、即興性の強いアヴァンポップを披露している。
65位 テニスコーツ「タンタン・テラピー」
さやと植野隆司によるユニットの3rd。スウェーデンのエレクトロ・アコースティック音響トリオ、TAPEが共同アレンジからプロデュースまで携わったことで、どこか童謡のような朴訥さを持った楽曲をクリアに響かせている。
64位 sora「re.sort」
soraこと黒澤健のデビューアルバム。古いジャズやボサノヴァなどのアナログ・サンプリングと繊細なグリッチ・ノイズが、ジャケット通りの穏やかなビートの中で調和しているエレクトロニカ。
63位 Walrus「光のカケラ」
95年結成のロックバンドの2ndフルアルバム。いびつなブレイクビーツの上で轟音フィードバックギターをかき鳴らし、唯一無二の音像を作り上げた国産シューゲイザーの傑作。
62位 POLYSICS「Now is the time!」
DEVOの遺伝子を継ぐニューウェイヴ・ロックバンドの7th。生ドラムでライブの躍動感をそのままに、クソガキのような稚気に溢れたポップネスに磨きをかけている。4曲にプロデュースとしてアンディ・ギルが参加。
61位 Buffalo Daughter 「シャイキック」
Grand Royalからのリリースなど国内外で幅広く活動するバンドの4th。クラウトロック的なハンマービートやトランスの導入、20分を超すフリーインプロなどの多彩なアレンジをミニマルな反復の中で繰り広げている。
2000年代邦楽アルバムベスト100位~81位
100位 石橋英子「Drifting Devil」
元PANICSMILEのドラマーによる2ndソロアルバム。ライヒからスラップ・ハッピー辺りまで想起させる、ピアノとドラムを中心としたプログレッシブ・ポップ。エンジニアはAxSxE(BOaT, NATSUMEN)が担当。
石橋英子「Drifting Devil」 - YouTube
99位 GAGLE「BIG BANG THEORY」
仙台出身の3人組ヒップホップグループの2nd。所謂ニュージャズ的な文脈でも語られるDJ MITSU THE BEATSのトラックの上で、手数の多いHUNGERのラップが畳みかけるように綴る東北の地からのアジテーション。
gagle/BIG BANG THEORY - YouTube
98位 ZENI GEVA「10,000 Light Years 」
元YBO2のKK NULLがリーダーを務めるバンドの、スティーヴ・アルビニ録音による目下の最新作。ツインギターにドラムのみのトリオ編成でShellacやMelvinsと共振するヘヴィロックを鳴らす。
zeni geva 10,000 light years - YouTube
97位 ミワサチコ「BEAUTIFUL PLACE」
博多のガールズパンクバンド「LOOP01」出身のシンガーソングライターによる、1stソロ。ベースに田代貴之(渚にて)、ドラムに北村茂樹(蝉)を加えた3人組で、Lo-Fiかつ儚げな質感のうたものをあくまでポップに聴かせている。エンジニアは中村宗一郎(ex ゆらゆら帝国)。
96位 Spangle call Lilli line「Nanae」
Felicity所属の3人組による益子樹(ROVO)プロデュースの2nd。エレクトロニカ的なアプローチも色濃かった1stから一転、リズム隊にサンガツのメンバーを迎えたことによるストイックな人力グルーヴが、繊細ながらもタフな印象を残すポストロック。
SPANGLE CALL LILLI LINE - E - YouTube
95位 Plastic Tree「トロイメライ」
90年代から活躍するヴィジュアル系バンドの4th。The CureやDinosaur Jr.直系のオルタナティブロックを基調としながら、ぶ厚くディストーションのかかったギター、性急な曲展開が国内のロックとの同時代性を感じさせる。編曲でNARASAKI(COALTAR OF THE DEEPERS)も参加。
Plastic tree - トロイメライ(Full album) - YouTube
94位 ツチヤニボンド「ツチヤニボンド」
マルチプレイヤー兼メインソングライターである土屋貴雅が率いる3人組の1st。バンドが掲げる『トロピカリズモ meets はっぴいえんど』 というキャッチコピーの通り、ブラジル音楽やブラックミュージック、日本語ロックがごった煮になった快楽がある。
ミツバチのサンバ/ツチヤニボンド 2011.1.29@国分寺North Exit - YouTube
93位 キエるマキュウ「TRICK ART」
CQ(BUDDHA BRAND)とMAKI THE MAGIC、ILLICIT TSUBOIが組んだヒップホップユニットの1st。サイケかつオールドスクールなトラックの上で好き放題やってるラップがとにかく楽しい。⑤”土曜日の実験室”での宇多丸の客演が白眉。
キエるマキュウfeat. 宇多丸/土曜日の実験室 - YouTube
92位 国府達矢「ロック転生」
元MANGAHEADのシンガーソングライターによる本人名義での1st。"ロックブッダ"を自で体現するかの様なボーカリゼーション、幾重にも重ねられたギターリフ、音のレイヤーが民族音楽的な響きで迫る。ここから次作まで15年のスパンが空いたことも致し方ないのかも、と思わせる完成度のロックアルバム。
91位 ヒダリ「ヒダリのしっぽ」
神戸の3人組ロックバンドの1st。⑨”タイムトラベルは楽し”の曲名から分かるように日本なりのニューウェーブリバイバルといった趣で、デビュー当時は「NUMBER GIRLの再来」とか「00年代のフリッパーズギター」とか呼ばれてたみたいだけど、どれもしっくりこないので「和製of Montreal」とかにしておきたい。
ヒダリ - 少女B | hidari - Shojo B - YouTube
90位 GREAT3「When you were a beauty」
90年代から活動するロックバンドの、ジョン・マッケンタイアがプロデュースした6th。各パートの音がクリアに分離したシカゴ音響派ならではのプロダクションだが、ボーカルはあくまでソウルフル。ギターとホーンアレンジにジェフ・パーカー(Tortoise)も参加。
89位 Kiwiroll「SQUEEZE」
札幌出身のロックバンドの1stフルアルバム。USハードコアや国内のオルタナティヴなシーンからの影響が色濃いバンドで、あぶらだこやbloodthirsty butchersから受け取ったバトンをQomolangma Tomato等後続のバンド達に手渡した、という意味では00年代の1つのターニングポイントか。
キウイロール/バカネジ/kiwiroll - YouTube
※ アルバム自体は廃盤ですが、↑のリマスター盤の1~12曲目が丸々アルバムと重複しています。
88位 andymori「andymori」
早稲田大学出身のメンバーで構成された3人組ロックバンドの1stフルアルバム。The LibertinesなどのUKトラッドなガレージロックを咀嚼した楽曲と、インドから高円寺周辺のカルチャーまでを歌った歌詞に独自性がある。
andymori "everything is my guitar" - YouTube
87位 ホッピー神山「意味のないものには意味がある」
プロデュース業やCM音楽で知られる作曲家のソロ名義での8th。吉田達也や鬼怒無月などのメンバーに16人編成の弦楽オーケストラを加えた大所帯で、フランク・ザッパを彷彿とさせるプログレッシブロックを鳴らす。
86位 Tatsuhiko Asano「Genny Haniver」
90年代に発表したEPをアレック・エンパイアが気に入り、同氏が主宰するレーベルからデビューに至ったという異色の経歴のミュージシャンの1st。自宅録音されたギター中心のモコモコとした響きのエレクトロニカ。
Tatsuhiko Asano - Lemonade [Genny Haniver] - YouTube
85位 徳永憲「眠り込んだ冬」
滋賀県出身のSSWによる完全セルフ・プロデュースの2nd。軽妙なホーンセクションを交えたパワーポップはディランやアレックス・チルトンを想い起させるが、渋谷系的スノビズムへの皮肉と嫌味に満ちている。
84位 サンヘドリン「満場一致は無効」
灰野敬二、ナスノミツル、吉田達也によるスーパーグループのスタジオ録音。灰野のボーカルギターを軸とした即興的なノイズロックだが難解さは無く、不失者や他の灰野ソロよりもポップに仕上がっている。
83位 狂うクルー「Battle Disco!!!」
収録時間38分、とにかく早いカオティックハードコア。
82位 Luminous Orange「Drop You Vivid Colours」
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのトリビュートへの参加や、トラットリアからのリリースで知られるロックバンドの4th。浮遊感のあるメロディに攻撃的なフィードバックノイズを重ね、オルタナティブロックやシューゲイザーを独自に解釈している。ゲストにNUMBER GIRLから中尾憲太郎、アヒト・イナザワが参加。
Luminous Orange-How High - YouTube
81位 Tujiko Noriko「ハードにさせて」
急進的な電子音楽レーベル<エディションズ・メゴ>からのリリースで知られる女性アーティストの3rd。断続的なノイズと加工されたボーカルが幾重にも重ねられた、エクスペリメンタルな手触りのグリッチポップ。ゲストにイルリメが参加。
2000年代邦楽アルバムベスト100
2010年代、終わってしまいましたね。
年末年始も過ぎ、メディアや個人のやる「2010年代のベスト○○」的な企画が乱立していますが、その前に2000年代の総括って本当に出来ていますか?
今回やろうとしている企画はタイトルの通りです!
最近のネットの感覚ではもはや"洋楽" "邦楽"という括り自体が古く、さらにディケイドで総括したアルバム単位のランキングなんて時代遅れじゃないか、と思われるかもしれません。
その感覚は間違っていないかもしれませんが、とはいえネット上で参照できる2000年代の邦楽について扱ったものが、以下の2つにほぼほぼ集約されてしまっている状況があります。
①ブログやTwitter上のタグに紐づけられた個人史的なもの
②ミュージック・マガジン2010年7月号「ゼロ年代アルバムベスト100 邦楽編」や、rateyourmusicのチャート、またはおんがくだいすきクラブが毎年やる企画に代表されるような、個人史を集計した集合知(メタクリティック)的なもの
ここ10年ほどで音楽を巡る状況はアーティスト側リスナー側共に自由度が高まり、その結果として圧倒的な広告とヒットチャート至上の世界に突入しようとしています。
かつてそこに対抗しうる唯一の力は批評でしたが、ここ数年でそれは上記のようなリスナーによるメタクリティックに取って代わろうとしています。
でもそれって結構危険な切り替えだったんじゃないの?というのが、僕の主張なわけです。
そこで、今ほんとうに必要なのは「2000年代の邦楽について扱ったweb上で誰でもアクセスできるディスクガイド」ではないか、という結論に至りました。
実際、これから5年、10年先の若い人から「2000年代の邦楽ってなにがあったの?」と聞かれた時に「いや、2000年代の邦楽にはそれぞれの個人史があって...」とかゴニョゴニョ言い続けることが正解なんでしょうか。
ここ1、2年で海外でも2000年代リバイバルの動きがにわかに起こりつつありますが、その対象がマイケミ、リンキン、アヴリル、パラモアだと分かって「あちゃ~」(?)となっている空気の今だからこそ、こういうものを残しておくべきなのではないか。
というわけで、今回私が作ったリストは個人のベストではなくあくまでディスクガイドに徹したつもりです。
だから「digの成果」的なものよりも「まとめのまとめ」的なものに近い。
選盤する基準に関しては「当時○○枚売れていた」とかは関係なく、「今聴いて面白いか」を主軸にして選びました。
とはいえ私1人で編纂したので偏った部分もあるとは思いますし、まあ「日本にピッチフォークがあったらこんなランキングになったんじゃないかな」的な遊びだと思ってもらえれば。
ではスタート。